今の学校現場は、小学校では4年生以上がほぼ毎日6時間授業となるなど過密な教育課程となっており、所定の勤務時間7時間45分(465分)のうち、登校から下校までの約7時間30分程度(450分)が、1日の日課にもとづいて教職員の業務内容が進められるため、工夫・改善の余地はない。すなわち、朝学習で 10分、6時間授業(1単位時間45分)で 270分、5回ある子どもたちの休み時間で 70分、給食指導で40分、朝・帰りの会で20分、清掃で20分の計 430分は、日課にもとづく教育活動によって分単位で忙殺されている。正規の勤務時間のうち、日課に拘束されない時間は、休憩時間を除くと20分程度しかなく、うち10分は毎日の職員打ち合わせ等に割かれている。
また中学校では、1日の持ち授業時間は平均すると4時間程度(1単位時間50分)であることから、放課後までに小学校より100分程度多く時間が生じるものの、その分、放課後は生活指導や部活動指導、進路指導、生徒会指導などに多くの時間が割かれ、そのほとんどが所定の勤務時間外に行われていることから、平均して小学校よりも超勤が多くなっている。
このように、日課に縛られないわずかな時間の中で、教職員の本来業務である授業準備、教材研究、テストの採点、宿題・ノートの点検など、日常的に不可欠な業務ですらすべて行うことは不可能であり、本来業務自体が正規の勤務時間外に行わざるを得なくなっているのが現状である。本来業務以外にも調査・報告作業や校外での会議等の業務などがあり、中学校ではさらに部活動が加わる。結果として小・中ともに毎日2~3時間程度の超勤を余儀なくされ、1日の中での実際の休憩時間は平均6分程度と過酷な勤務が強いられている。この状況では、仕事のやり方を工夫する余地などない。しかも、ここで示した業務は、何れも子どもたちへの教育を充実させる上で不可欠、かつ、直ちにとりかからなければならない業務ばかりである。
以上のように、学校の超勤・多忙化の根本的要因は、教員の一人あたりの持ち授業時数が多いことにより、正規の勤務時間内に授業準備などの不可欠な本来業務を処理することが困難なことにあると考えられる。2007年の全国学力テストの実施以降、「学習指導要領」の改定により年間標準授業時数が増加したことに加え、学力向上策の下で、年間標準授業時数を大幅に上回る授業時数の確保が現場に押しつけられるようになった。さらには、ティーム・ティーチングや習熟度別指導などが求められ、1時間の授業を複数の教員で行う時間が増えた。
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