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1. 記録期間 2021年9月1日(水)~9月30日(木) (課業日20日間 週休日8日間 祝日2日間)
2. 記録対象者 「給特法」適用の教職員
3. 調査内容と記録方法
(1) 調査内容A
「超勤時間」・・・割り振られた所定の勤務時間を超えて勤務した時間
「休憩時間の業務時間」・・・休憩時間内に業務した時間
「持ち帰り業務時間」・・・持ち帰って業務した時間
法令で①+②が「時間外在校等時間」と定義され、「月45時間・年360時間」が上限と定められている。
(2) 調査内容B
「休憩時間の業務時間」「週休日・休日の業務時間」の把握状況
時間外在校等時間の市町村公表 状況
(3) 記録・集約方法
個人ごとに①~③を把握し、記録用紙(個人用)に入力する。
「超勤時間」・・・勤務時間管理システム等から把握
在校時間(出勤~退勤)-7時間45分(条例にもとづく所定の勤務時間)で基本的に算出されている。
「休憩時間の業務時間」・・・個人での把握
勤務時間条例で定められた休憩時間「45分間」に業務を行った時間。
「持ち帰り業務時間」・・・個人での把握
自宅に持ち帰って行った業務の時間。
個人→分会→支会→支部→本部と各級段階で「集約人数」「①~③のそれぞれの合計時間」「①と②の合計が45時間を超えた人数」「①と②と③の合計時間が45時間を超えた人数」を集約
4. 集約人数
組合員の他、未組織者にも協力を要請  ※札幌市立学校を除く
小学校
4,000人
(全教員の約32.3%)
中学校
1,904人
(全教員の約28.3%)
高等学校
49人
(全教員の約0.7%)
特別支援学校(特別支援・養護・聾・盲) 82人(全教員の約2.3%)
    ※全教員に対する提出割合算出方法について(別記参照)
「義務教育学校」は「小学校」「中学校」にそれぞれ教職員数を半数ずつ加えて算出
「中等教育学校」は「中学校」「高等学校」にそれぞれ教職員数を半数ずつ加えて算出
1. 時間外在校等時間の状況
(1) 法令にもとづく「上限」遵守の状況
2020年4月から改正「給特法・条例」施行 により、教職員の時間外在校等時間の上限が「月45時間・年360時間」に定められた。しかし、法令改正後1年半が経過した今もなお、 47.3 %(持ち帰り業務を含めると61.3%)の教職員が 定められた上限を超える違法な勤務環境に置かれている。
(2) 2020年度「9月勤務実態記録」との比較
北教組は、2020年度も9月に同様の調査を行い 6,472人から回答を得ている。 2020年度と比較すると、時間外在校等時間は全校種平均で「7時間42分」減少、上限超えの割合は「10.5%」 減少している。
特に中学校と高校の減少が顕著である。
中学校 ・・・ 時間外在校等時間「17時間30分」減少、上限超えの割合「21.5 %」減少
高 校 ・・・ 時間外在校等時間「15時間52分」減少、上限超えの割合「17.1%」減少
大幅に減少した理由は、2021年9月は新型コロナウイルス感染症の流行により 緊急事態宣言下にあり、以下の道教委「通知」により、学校行事と部活動に大きな制限がかけられていたことにあると推察できる 。
道教委「学校における新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた教育活動等について」(通知)
〔抜粋〕 
(3) 学校行事
集団宿泊的行事(修学旅行や宿泊研修等)は、実施を見合わせること。
感染リスクが高い行事(運動会・体育祭や学校祭等)は、中止又は延期すること。
(4) 部活動
高体連、高野連、中体連、定通体連、高文連、各団体が主催する全道、全国に直結する大会等に出場する部活動に限り、感染防止対策を徹底し、活動を厳選(時間や人数、活動内容)するとともに、活動場所は自校内に限定して実施し、これ以外は休止とすること。
一方で、これだけ部活動に大きな制限がかかっていたにもかかわらず、「上限」超えの割合が半数以上いることから、 むしろ中学校・高校においては時間外勤務の要因は部活動だけではないことが明確になったと言える。
2. 「過労死 レベル」を超えた者の割合
約5人に1人が「過労死 レベル」を超える結果となっ ている。しかし今年度は前述の通り、部活動や学校行事の実施に大きな制限がかかっていたことから、「コロナ禍」でなければ相当数の教職員が「過労死 レベル」を超えていることが予想される。
道教委は、以下の「北海道立学校職員の過重労働による健康障害防止対策取扱要領」を定めている。
道教委「北海道立学校職員の過重労働による健康障害防止対策取扱要領」〔抜粋〕
第1 趣 旨
長時間の業務により健康への悪影響が懸念される職員及び職場における健康管理対策に対応するため、過重労働による健康障害の防止に当たっては、北海道立学校職員安全衛生管理規程(以下「安全衛生管理規程」という。)に定めるもののほか、この要領により取扱うものとする。
第2 対象職員
(1) 正規の勤務時間を超えて業務に従事した時間(以下「従事時間」という。)が直近1月で45時間(週休日の振替又は半日勤務時間の割振変更をした時間を除く。)を超えた職員
(2) 直近の2か月間から6か月間までのいずれかの1月当たりの平均の従事時間のいずれかが80時間を超えた職員
第3 産業医等への報告
校長は、第2に定める対象職員について、安全衛生管理規程別記第3号様式により、翌月10日までに産業医又は健康管理医に報告するとともに、その写しを教育庁教職員局福利課長に提出するものとする。
第4 面接指導対象職員
安全衛生管理規程第21条第3項により産業医等が行う面接指導の対象職員の範囲は次のとおりとする。
(1) 直近1月の従事時間が、80時間を超えた職員
(2) 直近の2か月間から6か月間までのいずれかの1月当たりの平均の従事時間のいずれかがが8時間を超えた職員
(3) 疲労の蓄積が認められる者、又は、健康上の不安を有している者
第5 時間の記録方法
教育職員の従事時間の記録にあたっては、過重労働対策が教職員の健康管理を目的としたものであることから、「校務のために従事した時間」を教育職員各自が判断のうえ記録するものとする。持ち帰り業務についても同様とする
上記「要領」によると、持ち帰り業務を含めた時間が月45時間超えの場合に報告対象となり、月80時間を超えの場合に面接指導対象となる。しかし、持ち帰り業務時間把握の周知はきわめて曖昧であり、「要領」が形骸化されている実態がある。
公務災害認定は、「公務と災害との間に相当因果関係があること(公務起因性)」が2大要件の1つとされている。しかし、持ち帰り業務時間が把握されていなければその立証はきわめて困難となることが想定される。
3. 不適切な勤務時間管理
在校等時間には、「休憩時間の業務時間」「週休日・休日の業務時間」が含まれるとされており、文科省 Q&A には以下のように記載されている。
文科省「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針に係るQ&Aの更新について」 〔抜粋〕
A8
「在校している時間」とは、学校に出勤で到着した時間から、帰宅のために学校を出る時間までの時間を指しています。
A14
土日や祝日などの業務も、校務として行っている業務の時間については「在校等時間」に含まれます。
A15
各学校においては、労働基準法に定められた少なくとも 45 分又は1時間の休憩時間を確実に確保した上で、「在校等時間」には、実際に休憩した分の時間を含まないこととなります。
文科省の定義では、採点業務や部活動等の校務を「休憩時間」や「週休日・休日」に行った時間は在校等時間に含まれることになっているが、実際は以下のように在校等時間には含まれていない実態が多くある。
「休憩時間の業務時間」「週休日・休日の業務時間」が多くの学校で把握されておらず、正確な勤務時間把握とはなっていないことが明らかとなった。
不適切な勤務時間管理が常態化していることにより、教育委員会が公表している数値は実態とは異なっていると言わざるを得ない。
4. 時間外在校等時間の市町村公表の状況
北海道教育委員会は、道立学校の四半期ごとに時間外在校等時間の状況を HP で公表している。道教委「道立学校の教育職員に係る時間外在校等時間(超過時間)について」
市町村に対しては、「北海道アクション・プラン(第 2 期)」の重点項目として、「在校等時間が計測・記録され、公表されるように積極的に取り組む。」とされている。
道教委「学校における働き方改革『北海道アクション・プラン(第 2 期)』」
Action3 重点
(1)
在校等時間の客観的な計測・記録と公表
道教委は、市町村教委に無償提供を行った「出退勤管理システム」の活用も含め、市町村立学校において、ICTの活用やタイムカード等により客観的に在校等時間が計測・記録され、公表されるよう積極的に取り組む。
市町村教育委員会の公表状況は、右記のようになっている。
現状は、札幌市を除く178市町村中 8 市町村の公表にとどまっている。
「働き方改革」をすすめるための地域や保護者への理解につながるものとはなっていない。
5. 学校の現場実態
(1) 過密化する教育課程・一人あたりの持ち授業時間数増について
学校週5日制による改訂「学習指導要領」(1998年)と比べ、現行「標準授業時数」は大幅に増加している。また、一部「改正」(2003年)により、「年間授業時数の標準を上回る適切な指導時間を確保」としたことから、過剰な余剰時数の確保が常態化し、教育課程の過密化がさらにすすんだ。その結果、教員一人あたりの持ち授業時間数が増加している。さらには、少人数学習やT・T(チーム・ティーチング)により、一つの授業を複数の教員が受けもつこととなり、加配措置が持ち授業時間を減らすことにはならず、むしろ打ち合わせ等の時間が増える事態となっている。
日本型の教育は、授業の他に、給食・休み時間・清掃・委員会活動など、児童・生徒のすべての活動を教職員が校務として行っている。下の例のように、これら児童・生徒の活動時間(日課)は、教職員の所定の勤務時間(7時間45分)とほぼ一致しているのが実態である。〈別記参照〉
小学校4年生以上は、ほぼ毎日が児童・生徒会活動、クラブ活動などを含めて6時間授業である。そのため、児童・生徒下校後に残された所定の勤務時間は 15~30分程度であり、そのわずかな時間に授業以外の課題点検・採点業務・教材研究・通信作成・打ち合わせ・欠席者への対応・保護者への連絡・教室環境整備などの必要不可欠な業務を終えることはほぼ不可能である。
2001年北教組調査 → 2001年11月21日~12月20日(30日間)で調査
第 2・4土曜日は週休日。それ以外の土曜日は半日勤務。
2021年は緊急事態宣言下であったことから、2020年と2001年との比較の方が適当であると考えるが、この20年間で時間外在校等時間は大きく増加している。この現象は、教育課程の過密化、一人あたりの持ち授業時数増、一方的な学力向上策の押しつけによる補習授業、公開研究会、全国学テ自校採点などが要因と考えられる。
(2) 特殊な勤務時間の割振りと休憩時間の業務について
上述の通り、児童・生徒が在校している時間は勤務時間とせざるを得ないため、高校を除く多くの公立学校が休憩時間を放課後に設定する以下のような特殊な勤務時間の割振りとなっている。
1ヶ月間における休憩時間に行った業務の時間数は、小学校(12時間51分)と中学校(12時間42分)が特に多い。課業日が20日間と考えると一人当たり平均で1日「6分27秒(小学校)」「6分54秒(中学校)」しか実際に休憩時間が確保できていないことになる。
児童・生徒下校後の所定の勤務時間終了までの勤務時間はわずかであり、必要不可欠な業務を休憩時間にも行わざるを得ない状況にある。しかも、これらは同時並行的に行われ、業務が終了しなければ休憩時間後にも続くこととなる。加えて、時間外手当が支給されない、あるいは家庭の事情によって休憩時間に行ってでも早く業務を終えようとする傾向が強い。
中学校は、小学校の状況に加えて、休憩時間内から部活動が行われている。子どもが学校にいる以上、休憩時間のために子どもを待たせることにはならない。
(3) 持ち帰り業務について
文科省、道教委は、「業務の持ち帰りは行わないことが原則」としているものの、現実として所定の勤務時間内で終えられない業務量がある。学校で業務を行ったとしても時間外手当が支給されるものではなく、家庭の事情によって業務を自宅に持ち帰る傾向があると推察される。
子育てや介護など、在校できる時間に限りのある教職員ほど持ち帰りが増えると考えられる。
持ち帰り業務は、夜間のほか早朝にも行われている実態がある。
「定時退勤日」を設定しても、業務が減らなければ自宅での持ち帰り業務時間が増えるだけである。
この20年間で、時間外在校等時間が増加している一方で持ち帰り業務時間は減少している。業務の内容が、学校で行わなければならない・個人の裁量ではできないものに変化していると推察される。
打ち合わせ等の増加
教員の複数体制や連携を重視した授業 ・・・ T・T、ALT、「特別支援教育」などでの連携
「学力向上策」の強化 ・・・ 公開研、研修などの実施
地域等の活用 ・・・ コミュニティ・スクール、外部講師などとの連携
「チーム学校」での学校運営 ・・・ 学年打ち合わせ、生徒指導、分掌部会などでの連携
個人情報の保護

 今の学校現場は、小学校では4年生以上がほぼ毎日6時間授業となるなど過密な教育課程となっており、所定の勤務時間7時間45分(465分)のうち、登校から下校までの約7時間30分程度(450分)が、1日の日課にもとづいて教職員の業務内容が進められるため、工夫・改善の余地はない。すなわち、朝学習で 10分、6時間授業(1単位時間45分)で 270分、5回ある子どもたちの休み時間で 70分、給食指導で40分、朝・帰りの会で20分、清掃で20分の計 430分は、日課にもとづく教育活動によって分単位で忙殺されている。正規の勤務時間のうち、日課に拘束されない時間は、休憩時間を除くと20分程度しかなく、うち10分は毎日の職員打ち合わせ等に割かれている。

 また中学校では、1日の持ち授業時間は平均すると4時間程度(1単位時間50分)であることから、放課後までに小学校より100分程度多く時間が生じるものの、その分、放課後は生活指導や部活動指導、進路指導、生徒会指導などに多くの時間が割かれ、そのほとんどが所定の勤務時間外に行われていることから、平均して小学校よりも超勤が多くなっている。

 このように、日課に縛られないわずかな時間の中で、教職員の本来業務である授業準備、教材研究、テストの採点、宿題・ノートの点検など、日常的に不可欠な業務ですらすべて行うことは不可能であり、本来業務自体が正規の勤務時間外に行わざるを得なくなっているのが現状である。本来業務以外にも調査・報告作業や校外での会議等の業務などがあり、中学校ではさらに部活動が加わる。結果として小・中ともに毎日2~3時間程度の超勤を余儀なくされ、1日の中での実際の休憩時間は平均6分程度と過酷な勤務が強いられている。この状況では、仕事のやり方を工夫する余地などない。しかも、ここで示した業務は、何れも子どもたちへの教育を充実させる上で不可欠、かつ、直ちにとりかからなければならない業務ばかりである。

 以上のように、学校の超勤・多忙化の根本的要因は、教員の一人あたりの持ち授業時数が多いことにより、正規の勤務時間内に授業準備などの不可欠な本来業務を処理することが困難なことにあると考えられる。2007年の全国学力テストの実施以降、「学習指導要領」の改定により年間標準授業時数が増加したことに加え、学力向上策の下で、年間標準授業時数を大幅に上回る授業時数の確保が現場に押しつけられるようになった。さらには、ティーム・ティーチングや習熟度別指導などが求められ、1時間の授業を複数の教員で行う時間が増えた。

今回の「9月勤務実態記録」によって、以下のことが改めて明らかとなった。
教職員の5人に1人が「過労死」の危険性があること
法令で定められた上限を多くの教職員が超えており、学校現場は違法な勤務環境が常態化していること
緊急事態宣言下で部活動や学校行事が大幅に減らされている状況にもかかわらず、多くの教職員が上限を超えていること。
勤務時間管理は、教育委員会・校長の責任とされているが、多くの学校で正確な時間把握が行われていないこと。
「学校における働き方改革」は、地域・保護者の理解が不可欠としながら、在校等時間の状況を公表している自治体はごく少数であること

 これらの問題を解決するためには、法令にもとづく勤務時間管理の徹底とともに、一人当たりの持ち授業時数の上限設定とその他の業務削減が必要不可欠である。

 業務量と教職員数のミスマッチが解消されない限り、教職員の超勤・多忙化が解決されることはない。北教組は、「学校における働き方改革」をすすめるため以下について提言する。