2017年4月に公表された文科省「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)」において、厚労省が過労死の労災認定の目安としている月80時間超の残業に相当する教員が、小学校33.5%、中学校57.6%に達していることが明らかになりました。
こうしたことから、文科省は、中央教育審議会に教員の時間外勤務の改善策の検討を諮問し、中教審は「学校における働き方改革特別部会」を設置し、昨年12月に「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」を公表しました。しかし、「中間まとめ」は、「学校及び教師が担う業務の明確化・適正化」などについての検討は行ったものの、依然として「給特法」の問題に踏み込んでいません。
教職員の長時間労働に歯止めがからない大きな要因として、「給特法」の存在があります。「給特法」は、「正規の勤務時間をこえて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る」(6 条1項)と規定し、政令は「原則として時間外勤務を命じない」「命じる場合は、超勤4項目の業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る」と規定しています。
しかし、学校現場では、時間外勤務を行わなければ膨大な業務を消化できず、「命令によらない」時間外労働が常態化しており、「給特法」は現場実態と著しく乖離しています。その上、超勤4項目以外の業務に従事した場合については何の定めもなく、教員の「自発的勤務」として時間外勤務にあたらないとされています。また、「給特法」は、労基法37条を適用除外し「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」(3条2項)と規定していることから、教育委員会・管理職による勤務時間管理や時間外勤務規制の責務までも曖昧にしています。現在、教員の時間外労働は、「給特法」制定時の月8時間程度から大幅に増加しており、「給特法」の見直しは必須です。
今国会において「働き方改革」が重要な課題となっており、その解消に向けて「労働基準法」の改正案が議論されています。長時間労働是正に向けては、時間外労働を抑制する法制の検討が肝要となります。したがって、学校における「働き方改革」をすすめるにあたっても、まず、教育職員に係る勤務時間管理の根幹をなす「給特法」についての論議がなされてしかるべきです。何より、「給特法」は、労働条件に関する最低基準を定めた「労働基準法」の一部適用除外を定めた法律であることから、殊更厳格な運用が求められるものであり、法と実態が乖離し、また、法の趣旨が形骸化している現状の改善なくして学校現場の働き方改革は成し得ません。
こうしたことから、教育職員の長時間労働解消に向け、実態と乖離している「給特法」の廃止を含めた見直しを求め、下記の項目についての実現を強く要請します。 |