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中教審「学校における働き方改革特別部会」は12月22日、「学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」を公表した。
これは、4月に公表した「教員勤務実態調査集計(速報値)」において、過労死レベルに相当する月80時間超の残業に相当する教員が、小学校33.5%、中学校57.6%に達していることが明らかとなったことから、文科省が「学校が教員の長時間勤務に支えられている状況には限界がある」として中教審に改善策の検討を諮問し、これを受け「中教審」が「特別部会」を設置して論議を重ね中間報告を行ったものである。 「中間まとめ」は、「10年前と比較して全ての職種において勤務時間が増加している」主たる要因として、「授業や部活動等の業務の時間が増加した」「持ち授業時数を減らすという観点で教職員定数の改善が十分でなかった」「給特法の存在も相まって、勤務時間を管理する意識が管理職や市町村教委において希薄だった」などとし、「国や地方公共団体において、制度的な障壁の除去や学校環境の整備など抜本的な方策や取組を講ずる」としている。 しかし、その内実は、「新学習要領の着実な実施」「日本型学校教育の良さを維持」を前提に「学校教育の質的転換を図る」として、教職員定数改善や改悪学習指導要領による授業時数増、「給特法」の見直しなど、根幹をなす制度の改善に踏み込むことなく、学校・教員の業務内容を学校事務職員や専門スタッフ、外部人材等に転嫁しようとするもので、抜本的な方策となっていない。教職員が異常な超勤実態を強いられることとなった要因は、労基法を骨抜きにする「給特法」の下、新たな教育施策を次々と加えて教職員に負担を積み重ね続けてきたことにある。 「中間まとめ」は、①学校・教師が担う業務の明確化・適正化、②学校の組織運営体制の在り方、③勤務時に関する意識改革と制度面の検討、④「学校における働き方改革」の実現に向けた環境整備の4つ柱で方策をまとめている。その中で、これまでの我々の要求などにもとづき課題は明確になっているものの、解決の方向性・方途は現場実態と乖離していると言わざるを得ず、具体策や財政措置も盛り込まれていないなどきわめて問題である。 第一に、「学校及び教師が担う業務の明確化・適正化」については、①「学校以外が担うべき業務」(登下校に関する対応、放課後・夜間の見回りや補導時の対応など)、②「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要の無い業務」(調査・統計への回答、休み時間の対応、校内清掃、部活動など)、③「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」(給食時の対応、授業準備、評価や成績処理など)に分類し、「中心となって担うべき主体を学校・教師以外の主体に積極的に移行していく」としている。これらは、教員の本務以外の業務の軽減をめざすとしているものの、地域ボランティア、学校事務職員、地域ボランティア・部活動指導員などの外部人材、サポートスタッフ、専門スタッフ(スクールカウンセラー、スクールワーカー)などに担わせるものとなっている。これらは現在学校において職務内容や位置づけが不明確で人材配置や財源の目途が立っていないものが多く、教職員と連携・意思疎通を図る上での課題もあり、一方的な導入は新たな問題を生じさせるものとなりかねない。 |
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また、学校事務職員に教員が担ってきた業務を転嫁しようとすることは、「事務をつかさどる」と法改正された「主体的な学校運営への参画」の趣旨に反するだけでなく、勤務実態を何ら考慮せず一方的に負担を押しつけるものである。
第二に、「学校の組織運営体制の在り方の見直し」については、「鍋ぶた型」の組織を見直すとして、主幹教諭等の配置を促進し、校長、副校長、教頭、主任、主幹教諭、指導教諭などによる組織マネジメントを重視するとしている。しかし、上意下達の体制強化は、教職員を差別・分断して協力・協働体制を阻害するもので、むしろ多忙化を助長させるものである。 第三に、「勤務時間の在り方に関する意識改革と制度面の検討」では、いくら働いても一切時間外勤務手当・割増手当を支払わないことを定め無制限・無定量の超勤の元凶となっている「給特法」見直し議論に踏み込んでいない。また、管理職による勤務時間管理の徹底と適正な勤務時間設定の論議に終始するとともに、超勤を教職員の働き方に関する意識改革の問題に矮小化し、教育現場に問題を転嫁するもので、政府の「働き方改革実行計画」の枠内で勤務時間の「上限の目安を含むガイドライン」検討を求めるにとどまっている。 勤務時間把握については、「ICTの活用やタイムカード」が示されている。校長は教職員の勤務時間を正確に把握すべきであるが、これらは持ち帰り残業を含む正確な勤務時間把握とはなり得ないばかりか、実態にもとづき実効ある超勤解消策に結びつけるものとしなければ何ら意味がない。また、長期休業中に「学校閉庁日」設定を求めているが、教職員の勤務態様については校外研修や特別休暇を保障しなければ、年休の強制となる恐れがある。さらには、保護者からの連絡に対する「留守番電話設置やメールによる連絡対応等の整備」は、学校外での業務負担の増加を招くなど何ら超勤解消に資するものではない。 第四に、「『学校における働き方改革』の実現に向けた環境整備」については、超勤解消をめざすとしているが、「チーム学校」の理念を実現するとして「共同学校事務体制の強化」「コミュニティースクールの導入」「統合型校務支援システムの導入」などにより、文科省による管理強化の施策を後押しするものとなっている。 以上のことから北教組は、引き続き文科省・道教委に対して授業時数増やゆとりのない教育課程、過密な日課など、子どもたちからゆとりを奪い学校現場に超勤・多忙化を強いる「学習指導要領」体制、「点数学力向上策」の押しつけなどの教育政策の転換を求めるとともに、「持ち授業時間数削減」に向けた「教職員定数改善」や現場実態と大きく乖離している「給特法・条例」の抜本的な見直し、長期休業期間中の自主的・創造的な校外研修の保障などを求め全力でとりくんでいく。 |
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2017年12月22日 北海道教職員組合 |
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