北教組・道私教協は、帯広市において11月2日から11月4日までの3日間、全道各地よりのべ4000人の組合員・保護者・地域住民の参加のもと、第68次合同教育研究全道集会を開催しました。
安倍政権は、歴代政権が憲法違反としてきた「集団的自衛権の行使」を容認する閣議決定を行い、「特定秘密保護法」「戦争法」「共謀罪法」を矢継ぎ早に強行成立させるなど、「戦争する国」づくりのため邁進しています。臨時国会の所信表明において安倍首相は、「9条への自衛隊明記」を「国防の根幹」であるとし、国会の憲法審査会において「改憲」議論を加速させようと目論んでいます。また、柴山文部科学大臣は、「教育勅語」について「現代風にアレンジして教えていくことは検討に値する」「普遍性を持っている部分が見て取れる」などと発言し、戦前回帰の教育をめざしています。
私たちは、憲法改悪を断固阻止するとともに、国民を無視し、立憲主義を蔑ろにする安倍政権の暴挙を断じて許してはなりません。
こうした動きと一体的に、安倍政権は4月から移行措置が始まった改訂「学習指導要領」によって、「小学校外国語」の導入など政財界に都合の良い「資質・能力」の育成を目論み、また「道徳の教科化」によって「愛国心」「規範意識」など特定の価値観を押しつけ、教育内容・方法・評価にまで詳細に介入し、「競争と管理」の教育をめざしています。
文科省は2017年度に「いじめ」「不登校」が過去最多となり、小学校低学年の暴力行為も急増していることを公表しました。しかし、これは、授業時間数の増加や「学力向上策」などの政策によって分断・孤立化させられている子どもたちの苦悩を何ら顧みず、根本的な分析や対策を怠っています。教職員も「過労死レベル」の勤務実態の中、子どもたちと向き合う時間が奪われ、管理強化により創意ある教育実践が阻害され、孤立・分断させられています。
私たちは今次教研において、今まさに危機に直面している「平和を守り真実をつらぬく民主教育」の確立をめざし、全道各地の「抵抗と創造」の自主編成にもとづく教育実践について論議を深め、未来の主権者であるすべての子どもたちに民主教育を保障するため、次のことを確認しました。
第1に、「戦争法」「共謀罪」など「戦争する国づくり」の施策に断固反対し、平和憲法を守り、「教育基本法を元にもどす運動」をはじめ「教育を語る全道250万人対話運動」を基盤に地域住民・保護者との連携を一層強化し、「みんなで平和憲法を守り、教育を創る道民運動」をさらに広げること。
第2に、競争による差別・選別教育をおしすすめる改悪「学習指導要領」や、これにもとづく「学力向上策」「特別の教科 道徳」「小学校外国語」に抗するとともに、教育内容・方法・評価への不当な介入を許さず、個人の尊厳を尊び平和を希求する主権者を育むため、人権教育・主権者教育や憲法学習などをすすめ、子どもの多様な「学び」を保障する自主編成運動を強化すること。
第3に、過酷な勤務実態を解消し、子どもと向き合う時間の確保とゆとりある教育活動をすすめるため、抜本的な業務削減をはじめ、教職員定数増・欠員解消、持ち授業時数減、部活動の社会教育への移行とともに、無制限・無定量の超過勤務につながる「給特法・条例」の廃止・見直しを求めること。また、道教委に対して「北海道アクション・プラン」の見直しと実効ある超勤解消策を求めること。さらに「通報制度」「実地調査」など主体的・創造的な教育活動を阻み、教育の自由を侵害する不当な圧力をはね返し、民主教育の確立に向けて組織の総力をあげてたたかうこと。
第4に、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」にもとづく子どもを主人公とした自主・自立の学校づくりをすすめること。また、「子どもの権利条例」の早期制定に向けた保護者・地域住民と連携する運動をつくり、さらに、連合・平和運動フォーラム・民主教育をすすめる道民連合など民主的諸団体や保護者・地域との共闘を強め、「日の丸・君が代」強制に反対する運動などをねばり強くとりくむこと。
第5に、文科省「特別支援教育」を実態化させず、「分けることは差別である」ことを確認するとともに、共生・共学をすすめインクルーシブ教育を実現すること。また、国連「障害者の権利条約」や「障害者差別解消法」の理念にもとづき、しょうがい者の社会参加を阻む社会的障壁を除去するために「合理的配慮」を行い共生社会の実現に向けてとりくむこと。
第6に、評価結果を賃金・任用・分限等へと反映させ、学校現場の協力・協働を阻害する「学校職員人事評価制度」については、撤廃を基本に、差別賃金・管理統制強化とさせず、すべての教職員の賃金改善とするよう、各級段階におけるとりくみを強化すること。
第7に、「主任制度」「主幹教諭制度」や「事務主幹制度」「新たなミッション加配」、「学校における働き方改革に関する緊急対策」などにもとづく教職員の差別・分断、管理強化に反対し、自律的・民主的職場づくりと、主任手当の社会的還元を含め、組織強化・拡大を組織の総力をあげてすすめること。また、「協定書」破棄の実態化を許さず、諸権利定着・拡大、超勤・多忙化解消をはかること。さらに、「教員免許更新制」の早期撤廃に向けてとりくむこと。
第8に、財政論に依拠した道教委「これからの高校づくりに関する指針」の撤回・再考を求め、希望するすべての子どもたちが地元の学校へ通うことができるよう地域の高校を存続させるとともに、「地域合同総合高校」の実現など、受験競争の解消とゆたかな高校教育改革をめざすこと。そのため、保護者・地域住民と連携した道民運動を強化すること。また、公私間の学費格差を解消するため、私学助成拡充をはかるよう求めること。
第9に、教育の機会均等を保障するため、「高校授業料無償化」への所得制限および朝鮮学校の無償化適用除外の撤廃、義務教育費国庫負担制度堅持・全額国庫負担を基本に、当面、負担率2分の1復元に向けて全国的な運動を展開すること。また、経済格差による「教育格差」の是正や「子どもの貧困」を解消するとともに「30人以下学級」の早期実現をめざし、当面、「新・教職員定数改善計画」の完全実施や「道独自の少人数学級」の実施拡大、給付型奨学金制度の拡充、「就学援助」の拡大、教育費の保護者負担の解消など、教育予算増額に向けたとりくみを強化すること。
第10に、「生涯健康管理体制」の押しつけに反対し、集団フッ素洗口中止、食物アレルギーに特化した対応の一方的な導入阻止、HPV・日本脳炎などワクチンの定期接種化の中止などを求め、子どものいのちと健康を守るとりくみをすすめること。また、特定の健康観の押しつけや差別につながる「全国体力・運動能力調査」の中止・撤回を求めること。さらに、個人情報保護の問題が危惧され、一層多忙化を助長させる道教委「校務支援システム」の早期撤廃、一方的な導入阻止に向けてとりくむこと。
第11に、「女性差別撤廃条約」の理念にもとづき、女性参画を推進し、学校や社会における性差別や性別役割分業の撤廃に向け、とりくみを強化すること。ジェンダー平等に対する攻撃を排し、学校教育のあらゆる場面で「ジェンダーの視点」を取り入れた実践をすすめること。
第12に、未だに収束を見ない「フクシマ」の現状から、「人類と核は共存できない」ことを再確認し、反核・反原発の学習をすすめるとともに、泊・幌延・大間をはじめとしたすべての原子力施設の廃止・建設中止を求め、「核・原発のない社会の実現」に向けてとりくみを強化すること。また、「被ばく」により、いのちを脅かされている子どもたちの状況の改善を求めるとともに、再生可能エネルギーへの政策転換を求め、自然との共存をめざす教育をすすめること。さらに、辺野古新基地・高江ヘリパッド建設阻止のたたかいを沖縄と連帯してすすめること。
世界の恒久平和を誓った憲法とその理念の実現をめざす民主教育は、今、戦後最大の危機に直面しています。私たちは、平和・人権・国民主権など憲法の原則を守り、個人より国家を優先する政府と文科省の政策を厳しく批判・分析し、「自分らしく」「よりよく生きる」教育の創造をめざして、地域・保護者と連帯して自主編成運動をさらに押しすすめる重要性を再認識しました。
「教え子を再び戦場へ送るな!」の決意を新たにし、憲法改悪に断固反対するとともに「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「平和を守り真実をつらぬく民主教育の確立」に向けたとりくみを一層前進させていくことを確認し、集会アピールとします。 |