道教委は11月6日、2019年度「全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書」(以下「報告書」)を公表した。今回の報告では、178市町村が結果公表に同意し(昨年比3町村増)、平均正答率の実数公表も24市町と昨年より増加した。こうした状況は、道教委が各市町村教委に対して執拗に公表を求め続けてきた結果であり、子どもはもとより学校間・地域間を競争・序列化させる姿勢は断じて容認できない。
道教委は、「習熟度別指導などにより、正答数の少ない子どもの割合が減少するなど改善の傾向が見られる一方、全ての教科で全国平均に届いていない」とし、「結果は学力の特定の一部」としているにもかかわらず、「報告書」では点数に特化して全国との比較に終始した。また、「考えたり話し合ったりする知識を活用する授業の改善が十分とは言えない」「授業以外で勉強する時間が全国と比べ短い」など、一方的に課題を挙げ、「『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善や、家庭や地域と連携した望ましい学習習慣・生活習慣の定着に向けた取組を一層充実させる必要がある」と、子どもや学校・家庭の実態を顧みずにさらなる努力を求めている。
「全道の状況」についても、今年度の調査は「知識と活用を一体的に問う」としてA・B問題の構成を見直して実施したが、依然として①平均正答率の推移、②各教科領域の平均正答率、③正答数の状況、について全国との数値比較に留まっており何ら変わっていない。また、質問紙調査と教科結果をクロス分析し、「学校のきまり〔規則〕を守っていますか」「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいたと思いますか」などの項目で肯定的な回答をしている児童生徒や学校の方が教科の平均正答率が高いとして、恣意的に学習・生活習慣や規範意識を強要している。さらに、管内および各市町村の状況についても、14管内の平均正答率の順位分布や各市町村の結果分析など、まったく例年と違わず全国平均との差異を意識させつつ列挙されている。
また、今年度の「報告書」では、冒頭に「学力向上の取組に関する改善の方向性」として、①授業改善、②検証改善サイクルの確立、③小学校と中学校が連携した取組の充実、④望ましい学習習慣の確立、の4点を掲げ、詳細にわたって点数向上に特化した「改善の方向性」を示している。これらは、本来学校にある教育課程の編成権に不当介入し、子ども一人ひとりや各学校の実態を蔑ろにした画一的な「点数学力向上策」に一層拍車がかかるものである。
子どもたちは、「いじめ」「不登校」「自殺」が過去最多になるなど苦しみを表出させている。この苦しみの一端は、ゆたかな「学び」が保障されるべき学校において、「学力向上」の名の下に常に点数競争に煽られ、差別・選別されるとともに、多様性や自分らしさが認められないことにある。教職員もまた、超勤・多忙化に歯止めがかからず、子どもに寄り添う時間が生み出せずにいるとともに、管理強化・点数主義によって自主的・創造的な授業づくりが阻害され、子どもたちに学ぶ楽しさを伝えられず苦悩を重ねている。
今、道教委がすべきことは、地域や子どもの実態に即し、ゆたかな教育を保障するため、押しつけの「学力向上策」を直ちに止め、①子どもの多様性を生かした「学び合い」を可能とする少人数学級を実現すること、②教育課程の弾力化や学校の裁量権を保障すること、③教職員定数を改善し教職員がゆとりを持って子どもと接することができるようにすること、など教職員の超勤・多忙化解消と教育条件の整備・拡充をすすめることである。
以上のことから、北教組は、「学力調査・結果公表」に断固反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求める。
私たちは今後も、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「ゆたかな教育」の実現のため、一人ひとりの子どもに寄り添う教育実践を積み重ね、市民とともに教育を子どもたちのもとへとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。
|