道教委は11月29日、2021年度「全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書」(以下「報告書」)を公表した。「報告書」では、「すべての教科で全国平均に届いていない」「自分の考えをもち、筋道を立てて説明することなどに課題が見られる」「授業以外で勉強する時間が短い」などの傾向を示し、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」「小学校と中学校の連携の強化」「望ましい学習・生活習慣の定着に向けた家庭や地域との連携」などを一層充実させる必要があると言及した。
「全道の状況」についても、依然として、①平均正答率の推移、②各教科領域の平均正答率、③正答数の状況、について全国との数値比較に留まった。また、質問紙調査と教科調査結果をクロス分析し、恣意的に「朝食の摂取状況」「ICT機器の活用状況」などの項目を挙げ、学習・生活習慣の確立やICT機器の活用を促している。さらに、管内および各市町村の状況についても、14管内の平均正答率の順位分布や各市町村の結果分析など、全国・全道平均との差異を強調する分析を行った。その上で、「北海道の学力向上の取組に関する改善の方向性」として、①検証改善サイクルの確立、②授業改善、③小学校と中学校が連携した取組の充実、④望ましい学習習慣の確立、の4項目を掲げ、「改善の方向性」とともに実践事例を示すなどしているが、これらは何ら例年と変わらない分析である。
現在、「いじめ」「不登校」「自殺」が過去最大となるなど、子どもたちの苦しみは増大している。また、厚労省「国民生活基礎調査」(20年7月)では、子どもの貧困率は13.5%と7人に1人の子どもが貧困状態にあり、とりわけひとり親世帯では48.1%と深刻な状態にある。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により所得が減少した世帯も多く、特にひとり親世帯においては貧困に苦しむ家庭が増加し、経済格差は拡大している。
北教組はこれまで、こうした問題の解消に向け就学援助制度・奨学金制度・高校授業料無償化制度など教育予算拡充の声を上げるとともに、子どもたちに寄り添う時間を保障するため超勤・多忙化解消を求めてきた。これに対して道教委は、「全国学テ」の結果をもとに学校と家庭のみに責任を押しつけ、全国・全道平均点との差異を強調して子どもたち・学校間の競争を煽り、序列化に拍車をかけてきた。また、本来学校にある教育課程の編成権に介入し、子ども一人ひとりや各学校の実態を蔑ろにした画一的な「学力向上策」を押しつけ、教職員の超勤・多忙化を加速させてきた。
こうした道教委の姿勢は断じて容認することはできない。今年もこれまでと何ら変わらない観点で調査結果を公表したことは、貧困に苦しみ学びたくても十分に学べない子どもたちの状況を何ら顧みず、全国順位の向上のみをめざす子ども不在の施策と言わざるを得ない。現実の子どもの苦悩に一切向き合うことなく膨大な時間・費用・労力をかけて、変わり映えのしない分析を毎年繰り返す道教委の硬直した姿勢こそが、改善されるべきである。
今、道教委がすべきことは、地域や子どもの実態に即し、ゆたかな教育を保障するため、押しつけの「学力向上策」を直ちに止め、①子どもの多様性を生かした「学び合い」を可能とする少人数学級を実現すること、②教育課程の弾力化や学校の裁量権を保障すること、③教職員の持ち授業時間数を減らすため定数を改善し、子ども一人ひとりとゆとりを持って接することができるようにすること、など教職員の超勤・多忙化解消と教育条件の整備・拡充をすすめることである。
以上のことから、北教組は、「報告書」「結果公表」に断固抗議するとともに「全国学テ」に反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求める。
私たちは今後も、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「ゆたかな教育」の実現のため、「主権者への学び」をすべての教育活動の底流とした教育実践を積み重ね、市民とともに教育を子どもたちのもとへとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。
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