文科省は7月28日、22年度「全国学力・学習状況調査」(以下、「全国学テ」)の結果を公表した。これを受け地方新聞等では、子どもの学習環境を整えられない実態や経済状況等の背景を抜きに、全国や前年度の数値と比較をしながら、順位や正答率などを強調し、数ポイントの差によって「高い・低い」と評価して報道している。とりわけ今年度は、中学校で新「学習指導要領」の実施後初となる4年ぶりの理科の調査結果について、平均正答率が5割を切り、新「学習指導要領」が求める科学的探究の力を測る問題で正答率が低いと分析された。文科省は「調査」の目的を「学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」としているものの、この間、各都道府県教委は学力調査の「目標値」を設定し、「学力向上」の名の下、過去問題のくり返しや事前対策の徹底など画一的な「授業改善」を現場に強いている。
道教委も同日、文科省の公表に追随し「全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」を公表した。教育長は「小学校のすべての教科で全国の平均正答率との差が縮まるとともに、小学校の理科、中学校の国語と理科の3教科で全国の平均正答率とほぼ同水準となるなど改善の傾向が見られる」とし、各市町村教育委員会及び学校の「最大限の尽力で一定の成果として現れてきつつある」などとコメントした。
文科省・道教委がすすめる「全国学テ」の実施・結果公表は、学校現場を過度な競争的環境に置くもので、学びの主体となるべき子どもは、蔑ろにされ続けている。「学力向上策」に偏った授業や「学習規律」「望ましい生活習慣の確立」を押しつけることで、子どもたちは疲弊し自ら学ぼうとする意欲を失っている。国連子どもの権利委員会は日本政府に対し「高度に競争主義的な学校環境が、就学年齢にある子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退および自殺の原因となることを懸念する」「過度に競争主義的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、大学を含む学校システム全体を見直すこと」を勧告しているが、勧告は無視され続け、むしろ競争に拍車がかかっている。こうしたことから、「いじめ」「不登校」の増加に歯止めがかからない現状が生じている。
道内では、全国平均との比較にとどまらず、毎年11月に公表される管内別の報告書により、管内・市町村の競争や序列化を生じさせ、「学力向上」のための校内対策会議等開催や、独自の「チャレンジテスト」の問題演習の強要などが行われている。また、7月末の結果公表前に「早期に自校の傾向を把握することが重要」として、各学校では4月のテスト実施後、回答(解答)用紙をコピーし自校で採点・分析させられ研修への持参が強要されるなど、教職員の超勤・多忙化に拍車がかかっている。
道教委は「貧困と格差」が「教育格差」につながっていることを分析し、施策に反映させることを最重点としなければならないにもかかわらず一向にこうした検証・分析は行われずに、「ICTの活用を含めた授業改善」「学校、家庭、地域の連携協働による望ましい学習・生活習慣の確立、習熟度別学習の拡大」など現場実態を顧みない一方的で画一的な施策の強要に終始している。
北教組は、「点数学力の向上」ではなく、学校・子どもの安心・安全を確保し、子どもたちが学びの主体となる環境を整えること、教職員に十分なゆとりをもたせることが急務であるとこれまで訴えてきた。文科省・道教委は、「全国学力調査・結果公表」とそれにもとづく「点数学力向上策」の押しつけを即刻中止し、各学校の自主的・創造的な教育活動と一人ひとりの子どもに寄り添う実践を保障するとともに、教職員をはじめ、保護者・地域の声を真摯に受けとめるべきである。また、少なくとも欠員不補充を早急に改善した上で、教職員の超勤・多忙化解消をすすめ授業準備・教材研究を勤務時間内に行えるようにするとともに、「子どもの貧困」解消と「教育格差」是正をすすめるなど、本来すべき勤務条件・教育条件整備に徹するべきである。
北教組は今後も、子どものゆたかな学びを阻害する「全国学力調査」に反対し、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「わかる授業・たのしい学校」「差別選別の学校から共生・共学の学校」をめざして、「主権者への学び」を基盤とした教育実践を積み重ねるとともに、教育を市民の手にとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。
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