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 中教審「質の高い教師の確保特別部会」の「審議のまとめ(素案)」に対する北教組声明

 中教審「質の高い教師の確保特別部会」(以下、「特別部会」)は4月19日、第12回部会において、「時間外勤務手当・割増賃金及び休日手当」を支給しないとする現在の「給特法」の基本的な枠組みを存置した上で、「教職調整額」を「基本給の4%から少なくとも10%以上にする」ことを柱とする「審議のまとめ(素案)」(以下、「素案」)を公表した。「素案」は他に、①「学級担任手当」を創設する、②若手教員をサポートするため「教諭」と「主幹教諭」の間に「新たな職」を設ける、③小学校中学年に教科担任制を導入する、などとした。

 これらは、喫緊の課題である教職員の過酷な長時間労働の常態化と教職員のなり手不足・欠員不補充の双方に対して、何ら実効ある対策となるものではなく、むしろ、現状維持あるいは悪化させ、結果として子どもたちの学習権を著しく侵害することになりかねないことから、最大限の懸念を表明する。

 第一に、過酷な長時間労働常態化の抜本的解消策は、定数改善と業務の削減に他ならないにもかかわらず、「素案」ではその本丸に手をつけずに避け、賃金改善のみにとどまっている。昨年8月の中教審「緊急提言」による業務削減においても実感できる効果は微々たるものであった。また、小学校中学年への教科担任制も、基礎定数化されるものではなく、わずかな「加配」措置にとどまることが想定され、効果はきわめて限定的なものである。

 第二に、教職員志望者が激減している大きな要因の1つは、学校が「ブラックな職場」と受け止められていることにあるが、「素案」は全くそれを払拭するものとなっていない。

 第三に、「給特法」の基本的な枠組みが維持されることで、①所定の勤務時間外に授業準備・ノート点検など翌日の授業までに必要不可欠な業務を行ったとしても「自発的勤務」として評価されることに何ら変わりがない、②「定額働かせ放題」が維持され、調整額が上がれば時間外勤務を行うことが当然との雰囲気が一層強まりかねない、③文科省・教育委員会による業務削減に向けたインセンティブが働かない状態を継続するものである、など「給特法」の根本的問題を何ら解決するものとなっていない。

 この間「特別部会」では、委員から、「(残業代を支払えば)長時間労働を助長する危険がある。業務の質の違いを無視した不公平を生じかねない」「一定の裁量を任されている教員に対し、(どこまでが業務かを)切り分けることは学校現場の状況になじまない」など、自発性・創造性が期待される教員の特殊性から、時間外勤務手当化がなじまないとする意見が示された。しかし、時間外勤務手当を支払わないことで、これまで文科省・教育委員会から学校現場に「ビルド アンド ビルド」で業務が上乗せされてきたのが現実であり、「労基法」の時間外勤務を抑制する「割増賃金」の趣旨を否定することは許されない。また、翌日の授業準備や教材研究など必要不可欠・急迫の本来業務が所定の勤務時間外で行われていることが大きな問題であり、日常多くの場合「どこまでが業務か」など峻別が必要な事例は稀である。さらには、自発性・創造性にもとづく勤務を期待することと、勤務時間管理を行うことは、他の職業と同様に十分両立可能であり、難しいことではない。

 学校現場からは、「お金の問題ではなく、業務を減らし、人を増やして欲しい」「人間らしい生活を保てる職場を望む」「もっと教材研究をする時間が欲しい」「子どもたちとゆとりをもって接することができる職場にして欲しい」といった切実な声が寄せられている。これは、ひとえに「教員を増やさない」予算の抑制と「教育内容と授業時数は減らさない」という的を射ない方策に終始しているからであり、このままでは教員は疲弊するばかりで学校現場の崩壊を止めることができない。ひいては、子どもたちの学びを阻害することになる。

 北教組は、引き続き、①労働基準法の適用除外を認める「給特法」廃止・抜本的な見直し、②教職員定数を増やすための「義務標準法」改正、③年間標準授業時数を削減するための「学習指導要領」改訂、④「部活動」の社会教育への移行、などを求め、広く地域や保護者と連帯しながら抜本的な超勤解消策に向けた運動を強化していく。


以上

 2024年4月19日

北海道教職員組合