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 中教審「『令和の日本型学校』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」(審議のまとめ)(案)」に対する北教組声明

 中教審「質の高い教師の確保特別部会」(以下、「特別部会」)は5月13日、「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)(案)」(以下、「まとめ案」)を公表した。

 その内容は、「給特法」の基本的な枠組みをそのままに、「教職調整額」を「基本給の4%から少なくとも10%以上にする」ことを柱に、①「学級担任手当」を創設する、②若手教員をサポートするため「教諭」と「主幹教諭」の間に「新たな職」を設ける、③小学校中学年に教科担任制を導入する、など4月19日に示された「素案」と概ね変わっていない。一方で「素案」に比べ、教職員・学校自体の自助努力、管理職のマネジメント能力、教育委員会の役割を一層強調し、文科省・国の責任を曖昧にした。

 学校現場の喫緊の課題である「教職員の長時間労働の常態化」と「教員のなり手不足」双方を解決する実効ある方策は、①労働基準法の一部適用除外を認める「給特法」の廃止・抜本的な見直し、②教職員定数を増やすための「義務標準法」「高校標準法」改正、③「学習指導要領」の内容削減とそれに即した年間標準授業時数の削減、④「部活動」の社会教育への移行、に他ならない。しかし、「まとめ案」は、これら実効ある方策を敢えて回避しており、現場教職員を失望させるものと言わざるを得ない。「まとめ案」に示された方策では、抜本的解消には程遠いことから、日本の教育を崩壊させかねないものとして最大限の懸念を表明する。

 先に述べた「給特法」廃止・抜本的な見直しや教職員定数改善等は、すべて文科省が行うべきことである。文科省が従来の慣習や固定観念にとらわれ業務の「スクラップアンドビルド」を行わなければ、学校現場は一層追いつめられることになる。「まとめ案」は、国の責任を棚上げにし、都道府県、市町村、各学校に対して、「学校・教師が担う業務に係る3分類」にもとづき、それぞれに努力を求めているが、現場段階のとりくみはすでに限界に達している。このことは、「3分類」が示されて以降3年間で、平日1日あたりの平均在校時間は、小学校は30分減、中学校で31分減にとどまる一方で、平均持ち帰り時間は、小学校で8分増、中学校で12分増、となっていることからも明らかである。

 「まとめ案」は、「教育内容と授業時間は減らさない」という文科省の意向を色濃く反映し、現行「学習指導要領」による教育課程の過密化については、まったく検討することなく、次期「学習指導要領改訂」時に先送りしている。

 教職員定数改善については、必要性は訴えているものの「基礎定数」を改善することは、「必ずしも増加した教員定数が持ち授業時数の削減に用いられない可能性がある」など、説得力を欠く理由をあげ、わずかな「加配措置」で済ませようとしている。24年度の小学校高学年の教科担任制に措置されている「加配」の全国配置率は10%程度に過ぎず、同様に中学年の教科担任制の効果もきわめて限定的になると推察される。

 最大の問題点は、現場実態と著しく乖離した「給特法」の枠組みを「現在においても合理性を有している」として維持したことにある。これでは、「勤務時間外に翌日の授業に必要不可欠な業務を行っても自発的勤務となる」「定額働かせ放題が維持される」など、根本的な問題は一切解決されない。今、現場教職員が求めているものは、「教職調整額」の増額などではなく、「子どもたちと向き合うための時間」「より良い授業をするための時間」であり、そのために「業務を減らし、人を増やす」ことである。

 以上のように、今回の「まとめ案」は文科省の「できるだけ予算をかけずにできることをする」方針を追随し、問題の解決に向けた実効ある方策を「行わない理由」を列挙することに専心するものになっており、許されない。

 北教組は、すべての子どもの学習権を保障し、学校がゆたかで実りある学びの場となるよう、「長時間労働の常態化」をはじめとする学校現場に山積する諸課題の解決に向け、「給特法」の廃止・抜本的な見直し、「基礎定数改善」など国における教育予算の拡充などを求め、広く地域や保護者と連帯し、抜本的な超勤解消に向け運動を強化していく。


以上

 2024年5月13日

北海道教職員組合