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 北教組第128回中央委員会 中央執行委員長あいさつ

 北教組第128回中央委員会の開催にあたり、一言ご挨拶を申しあげます。まず、日々子どもたちのために奮闘している中央委員、役員、組合員の皆さんに、本中央委員会に全道から結集いただいたことに対し感謝申しあげます。

 さて、イスラエルによる大規模なパレスチナ攻撃がはじまってから、半年を超えました。 イスラエルの圧倒的な軍事力によるガザ攻撃は熾烈をきわめ、ガザは未曾有の人道危機に陥っています。ガザ保健省の6月の発表によると、ガザで死亡したパレスチナ人は3万6,000人を超えました。このうち約4割を子どもが占めています。ガザでは少なくとも1万5,500人以上の子どもたちの尊い命が失われたとされています。また、ユニセフによると、ガザでは今年の2月の時点の推計で約1万7,000人の子どもが親を失い、家族と離ればなれになっているといいます。5歳以下の乳幼児のうち、丸一日食事をとれなかったことのある子どもは85%に上り、重度の急性栄養不良状態にある子どもの数は3万7千人に達しています。このような著しい恐怖と欠乏に陥った場合、子どもたちの心の中に、イスラエルに対する憎悪の感情が生じても不思議ではありません。武力攻撃は、憎しみの連鎖、報復の連鎖を生じさせます。武力で平和はつくれないことを改めて確認することが重要です。また、一端戦闘がはじまってしまうと、そう簡単に終息することはなく、多くの民間人の命が奪われ続けます。とりわけ子どもの命が無残に奪われ続けていくのが戦争や国際紛争の実相です。「国家の論理」のために「個人の命・人権」が犠牲になるのが戦争であることも改めて確認する必要があります。さらには、「他国を侵略しない」「民間人を攻撃しない」とした国際法の規範が破られるなど、法やルールが簡単に破られ秩序がなくなるのが戦争や国際紛争の実態であることにも留意する必要があります。加えて、イスラエルはガザ攻撃を「自衛戦争」と主張し、プーチンロシア大統領はウクライナ侵攻を「祖国を守る戦い」と正当化しています。このように「自衛」と称して多くの戦争や紛争が行われていることも忘れてはなりません。私たちは、一刻も早く武力による攻撃を止めなければなりません。また、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにしなければなりません。

 しかし、岸田政権は、政治と金の問題や国民が苦しむ物価高の問題等には何ら有効な手立てを講ずることなく、「戦争する国づくり」だけは閣議決定という国会・国民軽視の手法ですすめており、許されません。例を挙げれば、「敵基地攻撃能力」保有の閣議決定による専守防衛の原則の空洞化にはじまり、世界3位の軍事大国となるGDP2%5年間で43兆円に及ぶ防衛費の大幅増額、殺傷能力のある武器の最たるものである次期戦闘機の第三国への輸出解禁、「台湾有事」を口実にした沖縄・南西諸島の基地要塞化、自衛隊や海上保安庁が平時から民間の空港や港湾を円滑に利用できるよう「特定利用空港・港湾」に北海道5ヵ所を含む計16カ所を指定するなど、枚挙にいとまがありません。外交政策においても、日米同盟の強化と中国に対抗するような多国間連携の枠組みづくりに腐心し、「敵・味方」を色分けしようとしているとしか思えません。

 このままでは、限りない軍拡競争に陥りかねないばかりか、周辺国に徒に緊張をもたらすだけです。戦後日本は、平和国家としての信用を外交上の大きな財産としてきました。今まさに、平和国家としてその内実が問われていると言えます。やはり、軍拡ではなく、近隣国との意思疎通に努め、緊張緩和や信頼醸成をめざす努力を惜しまず、外交力を高め平和外交を展開すること、その信頼をもとに和平に向けて当事者に働きかけることこそが、恒久の平和を念願する日本が行うべきことと考えます。私たちは、「教え子を再び戦場に送らない」の決意の下、反戦・平和の運動を一層強化していく必要があります。


 次に教育に目を向けると、学校が益々国や財界にとって都合のよい「人材づくり」の場に変質させられようとしています。子どもたちは、画一的なものさしで優劣を決められる過度な競争環境の中に置かれています。また、世界的な教育の潮流が、思索型・探求型のクリティカル・シンキングの育成に主な目的を置くようにシフトしているにもかかわらず、日本は「いかに早く一つの正解にたどり着くか」を競い合っている状況にあります。文科省は「主体的・対話的で深い学び」をめざすとしていますが、その内実は、きわめて形式的であり、現実に起こっている社会的事象について批判的に考えることついては、極力遠ざけようとしています。現在の日本の教育は、いわゆる「コスパ」「タイパ」を最優先する若者の志向を助長しているように思えてなりません。同時に、物事を創造していく力、物事を多面的に捉える力、多様な意見を聞き熟議を行う力などを育てることがおろそかになっているように感じます。私たちは、改めて民主主義に貫かれた「主権者への学び」をめざして、子どもたちを権利主体として捉えた学びの実現に向け、実践を重ねていく必要があります。

 一方、教職員の長時間労働が、こうした実践をすすめる上で大きな妨げになっています。教職員は過酷な長時間労働が常態化することで、日々の業務に忙殺されるだけでなく、過労死と隣り合わせと言っても過言ではない状況に置かれています。また、学校が「ブラックな職場」であると社会で認知されるようになり、教員採用試験の倍率が年々下がり続けています。2025年度の北海道の公立学校教員採用試験の志願状況では、札幌市を含む志願者は前年度比483人減の3,582人となり、過去最少となりました。深刻なのは教員の「なり手不足」だけではありません。新卒教員が1年を待たずして離職する、高齢層職員が60歳前に離職する、定年延長を望まないなど、現職の離職者が年々増加し、欠員不補充の問題に拍車をかけています。これらは、子どもたちの学習権保障に直結する問題であり、教育の機会均等を脅かしかねないきわめて重要な問題です。

 言うまでもなく、教職員の長時間労働常態化の抜本的解消には、基礎定数増による教職員定数改善と現行「学習指導要領」の内容削減とそれに基づく年間の標準授業時数の削減による業務削減が必要不可欠であり、法的な措置として「給特法」の廃止・抜本的な見直しが必要です。中学校・高校においては、平日を含めた部活動の社会教育への移行が必要です。

 しかし、5月に示された中教審の「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境の整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)」は、教員の長時間労働の解消、「なり手不足」解消、欠員不補充解消の何れの問題に対しても、まったく実効性が期待できないものとなっています。文科省調査によると、教職員の精神疾患による病気休職者数は、6,539人(22年度)と過去最多を更新し、精神疾患による1カ月以上の病気休暇取得者を含めると1万2,197人にも上っています。日本の公立学校は既に持続可能なシステムとは言えない危機的な状況にあります。教育に予算かけずに、これを放置することは許されません。そのためには政治を変えなくてはなりません。

 北教組は、組織拡大はもとより、子どもたちのゆたかな学びの保障に向け、当面、教職員の長時間労働解消、「学習指導要領」の内容・時数過多など「カリキュラム・オーバーロード」の解消、子どもをとりまく過度に競争的な環境の解消、この3つの解消に重点を置いて、今後も組織の総力をあげてとりくんでいくことを約束し、開会の挨拶に代えさせていただきます。ともにがんばりましょう。