2024年度 道教委「全国学力・学習状況調査 北海道版結果報告書」に対する北教組声明
道教委は11月6日、2024年度「全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書」を公表した。その中で、「平均正答率が全国平均に達していないものの、中学校の国語は全国平均とほぼ同水準で、小学校の国語及び中学校の数学は全国平均との差が縮まるといった改善傾向が見られ成果が現れている」「一方で、小学校の算数では全国平均との差が広がっている(差2.8)」とした。なお、昨年度の報告書では「小学校の算数(差1.5)及び中学校の数学と英語の3教科で縮まり、07年度の調査開始以来初めて、全ての教科で2.0ポイント以内となるなど改善の傾向」としていた。改めて、毎年調査対象の子どもが異なる中で数ポイントの差があることに対して「評価・分析」し、恣意的に「ICTの効果的な活用、家庭学習の定着が必要」と結論づけること自体に、何ら意味がないと言わざるを得ない。
文科省は調査の目的を「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における 児童生徒への学習指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」としているが、先述したように全く教育施策の成果と課題の検証になっていないのが実態である。
学校では「得点をとること」が目的となり競争を煽られ、1年を通じて対策としてのチャレンジテストを強制されるだけでなく、「学力調査」の結果がともなわないと「加配教員が減らされる」と発言する管理職すら存在する。北教組の調査では、「学力調査終了後、子どもは疲れ果て、寝てしまったり集中力が極端に減ったり授業にならない」「過度なプレッシャーを理由に欠席や不適応行動をとる子どもがいる」など、子どもが精神的に追い詰められている様子が寄せられている。
本来、教育行政の責務は、子どもが安心して通える居場所としての学校づくりのための人的・物的両面での環境整備を行うことである。しかし、この数年、教員の欠員に対する不補充は悪化するばかりで一向に改善の兆しすら見えない。また、文科省23年度調査では全国小、中学校で不登校の児童生徒数が34万6482人となり過去最多を更新し、増加は11年連続、30万人を超えたのは調査開始から初めてとなった。また小、中、高校などのいじめの認知件数が73万2568件、いじめの重大事態1306件、暴力行為の発生件数は10万8987件といずれも過去最多となっている。これらは子どもたちの苦悩の現れである。文科省・道教委は、国連子どもの権利委員会の日本に対する「あまりにも競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放すること」とした勧告を真摯に受け止め、競争的・管理的な学校から子どもたちを解放すべきである。そのため「学力調査」ではなく、不登校やいじめ認知件数増加の要因分析として07年の「学力調査」開始以降の教育政策・施策の検証こそが教育行政のまず行うべきことであることを指摘しておく
北教組は、教職員の自発性・創造性を尊重し、子どもたちが「わかるよろこび」を感じることができる学校をめざす観点から、「報告書」「結果公表」に断固抗議するとともに「全国学力・学習状況調査」に反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求める。
私たちはこれまでと同様、今後も、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「ゆたかな教育」の実現のため、子どもの主体性・創造性を尊重し、意見表明権を保障した教育実践を積み重ね、市民とともに教育を子どもたちのもとへとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。
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