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 第69次合同教育研究全道集会に参加された組合員・保護者・共同研究者の皆さん大変ご苦労様です。また、集会の成功に向け準備万端を整えていただきました空知支部の組合員をはじめ地元夕張市の教育関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

 夕張での開催は2008年以来11年振りとなります。政府の失政によって招いた財政破綻から12年、市民生活の再建と子どもたちの教育環境づくりにとりくんでこられた皆さんに敬意を表します。今次教研をまたこの地で開催できることは、全道の組合員の熱い連帯の意志の表明です。厳しい現実に直面しながらも、これに屈することなく、未来を担う希望に満ちた子どもたちを育むための集会となることを願います。

 さて、今年7月に公表された政府の「自殺対策白書」は、「10代の自殺が前年より増え過去最悪」となったことを明らかにしました。特定できた原因・動機で最も多いのは「学校問題」で、その内訳は多い順に、学業不振、進路の悩み、学友との不和、入試の悩み、いじめとなっています。「学業不振」が第一の要因というのは、政府・文科省が点数を唯一のものさしに学校や自治体を競わせ、子どもたちを追い詰めてきたことの表れです。

 一方、9月に公表されたOECD調査では、日本の教育予算は対GDP(国民総生産)比2.9%とはじめて3%を切りました。加盟35か国中で3年連続最下位となり、改めて、教育支出の多くを家計が負担している現状が明らかになりました。

 受験競争に勝ち抜いた子どもの家庭は所得が高いことが明らかになっており、経済格差が一層「教育格差」となって影響しています。こうした中で、2020年に始まる大学入学共通テストに導入される英語民間試験に関して、「身の丈に合わせて」とする文科大臣の発言は、「格差」を容認し、生まれた地域や経済力の差に目をつむり、憲法に保障された子どもたちの教育を受ける権利や機会均等を奪うもので、断じて許されません。

 今、教員の欠員が生じ、採用試験の倍率が低下するなど、深刻な「教職離れ」がすすんでいます。教員不足で蔓延する免許外教科の指導や多忙化による教材研究、研修時間の不足は、「子どもの学習権」の侵害と言えます。

 子どもたちや教職員を追い詰め苦悩させている競争と管理の政策を転換し、抜本的な勤務条件と教育条件の改革が、子どもたちの「真の学力向上」につながることは明らかです。

 政府・文科省は、今臨時国会において、「給特法」をそのままに、月45時間を上限として規制する「ガイドライン」の指針化と「1年単位の変形労働時間制」導入を可能とする法「改正」を上程しました。国通りの制度「改正」はむしろ超勤を追認し、固定化・常態化させるものです。

 原則超勤は命じない・命じる場合を限定させ、やむを得ず行った超勤については、直近での完全回復を基本に長期休業中における実質的回復を確実に措置させることが必要です。あわせて、業務の削減と一人の教員の持ち授業時数削減に向けた定数改善、「給特法」の廃止・抜本的見直しなどの改善を実現するため、日政連・北政連議員をはじめ、地域・保護者の皆さんと固く連帯し、院内外の運動を引き続き強化してまいります。

 今年の8月、日教組が1953年に制作した映画「ひろしま」がNHKのEテレで放映されました。この映画は、被爆した市民8万8千人が撮影に参加し平和への強い願いのもと制作されたもので、国際的評価も受けましたが、大手映画会社が「反米的」と配給を棚上げし、推薦を見送る県教委もでるなど上映に厳しい壁が立ちはだかりました。しかし、当時の総評や労組、市民団体の協力を得て上映に漕ぎつけ、北教組は1953年から翌年にかけて、上映運動を積極的にすすめ、各地で大きな反響があったと北教組史に記されています。今、この映画の価値が見直され、世界中で上映されてきています。

 原爆の悲惨さや反戦・平和のメッセージだけでなく、被爆者や戦災孤児への差別や偏見、貧困と格差、人間の尊厳や生存権など、現在の社会につながる根源的な問題を問いかけています。戦前・戦中の記憶が風化されようとする中で、戦争とは何か、改めて、学ぶためにふさわしい映画と言えます。

 今、安倍政権のもと、憲法9条を死文化して「戦争する国」づくりに邁進する動きとともに、「国家のための人材づくり」の教育がすすめられようとしています。

 こうした中で迎える今次教研は、「平和と教育」を自らと国民の手で守り創ることを原点に、69次にわたって積み重ねてきた、自主教研運動の真価が問われる大事な集会といえます。

 教研集会に参加した皆さん。すべての分科会で、持ち寄った実践をもとに交流してください。

 今、私たちが置かれている社会・経済状況と政府・文科省の政策がめざすものを厳しく分析・批判し、子どもの現実や地域・社会と教育のかかわりなどについて議論を深めてください。平和で民主的な社会を希求する主権者を育むため、抵抗と創造の自主編成運動を強化し、地域・保護者と連帯して具体的運動をすすめる方向性を確認していただきたいと思います。

 本集会が、「教え子を再び戦場に送るな!」の固い誓いのもと、子どもたち誰もが夢や希望を持ち、意欲をもって学ぶことができるよう、「平和と真実を貫く民主教育の確立」に向けて、さらなる前進をはかる場となることを願い挨拶とします。ともに頑張りましょう。

  2019年11月1日

                                北海道教職員組合 中央執行委員長